ヘルム

ヘルム
本来は舵柄・操舵装置・舵角などの意味があるが、ここでいうヘルムとは、舵を切らなくても艇が向きを変えようとする力のことである。

ウェザーヘルム … 風上に向かおうとするヘルムのこと
リーヘルム … 風下に向かおうとするヘルムのこと

舵を切るということは失速するということである。ヘルムが発生しそれを打ち消すために舵を切ると、抵抗となり失速してしまう。
それでは、ヘルムとは有害なだけであろうか?
舵を切らなくても艇が向きを変えようとする力であるということは、向きを変えるときには有効に利用できるということになる。つまり、ヘルムを使うことでタックやジャイブ、ラフィングやベアリングの際のスピードのロスを軽減することができるのである。

ヘルムが発生する原因
C.E. (Center of Effort 効果中心)とC.L.R. (Center of Lateral Resistance 横方向の抵抗中心)の位置にズレが生じる事でヘルムが発生する。

ヘルムを発生させる要因

ヒール
ヒールすることでC.E.とC.L.R.にずれが生ずる。下図はオーバーヒール時の例。ウェザーヘルムが発生する。

マストの前後位置
艇の状態には変化がないのでC.L.R.には変化はないが、セール全体が移動するため、C.E.も移動するためずれが生じる。下図はマストを前に移動した時の例。リーヘルムが発生する。

ドラフト
艇の状態には変化がないのでC.L.R.には変化はないが、ドラフト(セールの最も深い所)位置が移動すると、C.E.も移動するためずれが生じる。下図はドラフト位置が後方に移動した時の例。ウェザーヘルムが発生する。

センターの位置
セールの状態に変化はないのでC.E.に変化はないが、センターが振られるとC.L.R.が前に移動するためずれが生じる。下図は前に振られたときの例。ウェザーヘルムが発生する。
ジブとメインのバランス(スピネーカーを有する艇の場合、フリーではそれを含む)
セールにはそれぞれ揚力中心が存在する。そのバランスが崩れた場合に艇全体としてのC.E.がどのように移動するかは容易に想像できると思う。

乗艇位置
乗艇位置により喫水線が変化するため、艇全体のC.L.R.の位置も変化する。